森の用水路のカワニナ2

ユキとその友人のヒデは予定通りにあの用水路を目指して、学校帰りの道を歩いていた。
用水路といっても農業用水が流れる堀だ。山際にあるのでサワガニやワサビが生えそろっている鬱蒼とした場所で、暑い日にはよく立ち寄って涼んでいた。
「……ユキのお父さんの言ってたヒントって、本当にあそこにあるの?」
「知らないよ。僕だってあそこにあまり行かないし、行って見ないとわからない」
ふーんと語尾を上げてうなるヒデに対してユキも同様の気持ちを抱いていた。
乗り気じゃない。ヒントを調べたって面白くない。ただあの薄ら笑いをする父親の顔を思い浮かべると、どうしても「答え」を見つけたくなる。
ああやって昔から僕をおちょくって、自分だけ楽しんでいるに違いない。
乗り気じゃないけど前に進むにはやるしかないんだよな……。
用水路に着いた二人はすぐさま変わったものを探すことにした。
見慣れたものは特別にみえない。どれもこれもいつもどおりだ。サワガニがわさわさ歩いている。地味な貝が水底に転がっている。蚊がいっぱいいる。
十分ほど周辺を探索してみたが、結局なにも変わったものをみつけることはできなかった。
やっぱりなにもないじゃないか……なにがヒントだよ。くそっ。