前もって看護士さんから説明を受けた。
ここは特別病棟だから、と。
特別な扉を抜けると、さきの広間ではたくさんの患者さんたちが釘つけになってテレビをながめていた。
どこからかうめき声があがる。私には理解しがたかった。
指定の部屋につくとそこには変わり果てたある人の姿があった。
眼はあいているがその眼は濁っていた。
壁には「酸素」と書かれている透明な容器がくっついていて、絶え間なくまるい粒を発生させている。
目を少し上にむける。
そこには薬と思しき点滴パックがぶら下がっていた。
そのあとに再び面会の人の顔に目をむける。
その表情はまるで理性を失ってしまった人形に思えた。
なにもできずに立ち尽くす自分。
しびれる左手がいつまでも疼いていた。