小説

数日前の日記に書きましたが、『BCM』に隠されたもうひとつのストーリーの一部をここに公開します。
ボツレベルなのでBCMと別物として見てください。


応接室―。
 エストエンベラート社長は何故訪問するのだろうか。根本的な謎にぶつかる。一口コーヒーを飲んでベテルは考えた。コーヒーカップを置くやいなや、エストエンベラートの口から言葉が飛び出す。
「んー。何で僕達がやったと思うんだい? 改造BCMをつくったのは僕たちだというのかい?」
心を見透かしているのか? あの話は漏れていないはずなのに、彼は話題をついた。手から汗がにじみ出る。エストエンベラートは中華系の顔立ちで、その狐目とつり上がった唇は笑っている。
「あのですね…。そのような巷の噂には動じないんですよね、社長は。」
「うん、そうだよ。あとそれとね、僕のこと社長じゃなくてエストでいいよ。」
「あ、そうですか…。ではエスト…さん。」
「なんです?」
「何か用があってこちらにいらっしゃったんですよね?」
「おーっと! そうだった。ゴメン、忘れてた。それはね…。」
「私たちEST ENVELLART社のSAコンピュータチップにBCMの情報を提供して欲しいなぁ〜と思って。」
ベテルは何故直接BCM研究所所長シリウスに言わないのか気になった。私たちにそんなこと言われても困る。
「何故…私にそんなことを…。」
「ん。」
エストエベラートは何か思いついたように立ち上がり、それじゃと言い残して去っていった。意味が分からない。何だったんだ? とてつもなく不思議な人間だ。とにかく嵐は去った。しかしあのわだかまりは到底解決しそうもない。意味無きこの数分だけで、契りを破った自分がつくづくバカらしく思えてしょうがない。
「くそ!!」
固く握り締められた両拳は両太股に鞭打った。目頭が熱くなってきて、今すぐにでも泣き出したくなった。